在宅医療にかかるお金

2013年4月3日
梶原診療所 在宅サポートセンター長 平原佐斗司

在宅医療にかかるお金

在宅療養を始めようとする御本人と御家族にとって、在宅医療にどれぐらいお金がかかるかは重要な問題です。

在宅医療にかかるお金は、①医療機関への支払い、②薬局への支払い、③介護保険の自己負担などが主なものです。

在宅ケアを受ける場合、多くの方は介護保険を利用します。この場合、医療機関に支払う医療費とは別に介護保険の支払いが生じます。介護保険の支払いは、要介護度とケア内容によって異なってきますので、これらが決まった後ケアマネージャーにご相談ください。

また、院外薬局の場合は、薬局への薬剤費・調剤費などの支払いが生じます。薬剤費についても、使用する薬剤によってかなり異なりますので、かかりつけ薬局にご相談ください。


ここでは、訪問診療をうける医療機関への支払いについて解説します。

医療保険制度そのものが複雑なため、在宅医療を受けた場合の一部負担金についても個別のケースでかなり異なります。

健康保険の種類によって、表のように在宅医療に要した医療費の1割から3割までの自己負担が生じます。

表1 自己負担割合
区分 負担割合
0歳~小学校就学前の乳幼児 医療費の2割 *
小学生以上69歳以下の方 医療費の3割 *
70歳以上75歳未満の方 医療費の2割
(2013.4現在は実施は1割負担のまま)
(現役並みの所得者は3割)
75歳以上 医療費の1割
(現役並みの所得者は3割)

* 多くの自治体で乳幼児、および小中学生を対象にした小児医療費助成制度(無料)あり

また、これらの医療費負担を軽減する様々な制度があります。

例えば、在宅患者さんの中には、難病や障害制度などによって、医療費が大幅に軽減される方がいます。

また、高額療養費制度によって、医療機関や訪問看護ステーションに対しての支払いについては、低所得者の高齢者は月8,000円、一般の高齢者は月12,000円までとなるなど、限度額以上の支払いは免除されます。薬剤費も合わせて月あたりの医療費の合算のうち、限度額を超えた分は、後に還付を受けることもできます。

在宅の医療制度は非常に複雑で、地域によって、あるいは所得などに応じて異なっており、個別の医療費については、医療機関の医療事務員やソーシャルワーカー等にご相談ください。

表2 70歳未満の自己負担限度額
対象者 自己負担限度額(月額) * 多数該当 **
上位所得者 *** 150,000円+(医療費-500,000)×1% 83,400円
一般 80,100円+(医療費-267,000)×1% 44,400円
低所得者 35,400円 24,600円
高額長期疾病患者(慢性腎不全、HIV,血友病)の自己負担限度額(月額):1万円
人工透析を要する上位所得者(月収53万円以上)については自己負担限度額3万円

* 70歳未満の自己負担限度額は、①医療機関ごと、②医科・歯科別、③入院・外来別に適応

** 多数該当:直近1年間における4回目以降の自己負担限度額(月額)上位所得者

*** 上位所得者は月収53万円以上のもの

表3 70歳以上、75歳未満の自己負担限度額
対象者 自己負担限度額(月額) * 多数該当
世帯単位(入院・外来) 個人単位(外来のみ)
現役並み所得者 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 44,400円 44,400円
一般 62,100円
(2013年4月1日現在は44,400円)
24,600円
(2013年4月1日現在は12,000円)
44,400円
低所得者II ** 24,600円 8,000円  
低所得者I *** 15,000円 8,000円  
高額長期疾病患者の自己負担限度額(月額):1万円
表4 75歳以上の自己負担限度額
対象者 自己負担限度額(月額) * 多数該当
世帯単位(入院・外来) 個人単位(外来のみ)
現役並み所得者 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 44,400円 44,400円
一般 44,400円 12,000円 44,400円
低所得者II ** 24,600円 8,000円  
低所得者I *** 15,000円 8,000円  
高額長期疾病患者の自己負担限度額(月額):1万円

* 70歳以上の自己負担限度額は、世帯単位(入院・外来含む)、個人単位(外来のみ)別に適応される。

** 低所得者II:世帯員全員が①市町村民税非課税者、あるいは②受診月に生活保護法の要保護者であって、自己負担限度・食事標準負担額の減額により保護が必要でなくなる者

*** 低所得者I:世帯員全員が、「低所得者II」に該当し、さらにその世帯所得が一定基準以下

在宅医療の主な対象は、75歳以上の後期高齢者の方が多いので、多くの方が1割負担です。ここではそういった方を想定して、在宅医療にかかる医療費について解説します。

表は、都内某診療所の患者さんの在宅の保険点数の分布です。(医療点数1点が10円ですので、1割負担の方は、グラフの数字がそのまま自己負担額(円)を表していると考えてください。)

図1 訪問診療を受けている方の一ヶ月の保険点数の分布

~某診療所(機能強化型在宅療養支援診療所)の2013年1月の
在宅患者さん189名の医療点数を見てみました~

訪問診療を受けている方の一ヶ月の保険点数の分布

* 在宅医療の管理料は、①一般の診療所、②一般の在宅療養支援診療所(在支診)、③機能強化型在支診、④グループ内に有床診療所をもつ在支診によって、異なります。

* 医療保険の自己負担分とは別に、交通費を請求している医療機関もあります。

在宅医療を受けている人の医療点数は、91%が10,000点未満、78.3%は7,500点未満でした。また、平均は8,631点、中央値は6,984点でした。

つまり、多くの人が1割負担だとすると、8割近い人が、月7,500円以下の自己負担ということになります。さらに、高額療養費制度によって、低所得者の場合は月8,000円以上、一般の高齢者の場合月12,000円以上の支払いが免除されますので、ほとんどの人はこれらの基準より少ない支払いとなります。 (ご自身の自己負担限度額は、市区町村の窓口で確認してください。)


安定した方への医療費の自己負担分の支払いについて、例を挙げて説明します。

Aさんは、93歳の女性で、中等度のアルツハイマー型認知症を患っています。

現在は、もの忘れはあるが、デイサービスを利用し、穏やかに過ごしています。医師に月2回の訪問診療を受けています。訪問診療では、接し方や環境整備のアドバイス、意思決定の援助、急変時の治療などを行います。

月2回の訪問診療(1回830点)と定期的に訪問し、24時間駆けつける体制を保証する在宅時医学総合管理料(機能強化型)4,600点を合わせて、月6,260点(62,600円)となり、1割の自己負担6,260円を支払います。

このように、訪問診療を受けている方でも、Aさんのように安定している方であれば、月々7千円以内の自己負担と考えてよいでしょう。

在宅医療の医療点数は、大きく分けて、①在宅総合診療料という管理料と、②医師が自宅訪問・診察する訪問診療料や往診料、③医療機器の管理料や医療処置、各種検査にかかる費用、④その他(訪問看護指示料など)に分けられます。

Aさんのように落ち着いている方は、①の在宅総合診療料とその算定条件である月2回の訪問診療料のみということになります。

在宅時医学総合管理料とは、在宅で療養するにあたり、医師が定期的に往診を行う必要があり、ご病状の急な変化及び急病の発症などに対し、夜間・休日を含む24時間の診療体制での療養管理を実施したことに対しての料金です。

このAさんがある月に肺炎にかかり、採血やレントゲン検査を行い、1週間毎日点滴や注射をした場合、保険点数が22,370点(223,700円)となりました。1割負担だとすると22,370円の支払いとなりますが、高額療養費制度が適応され、12,000円の支払いとなりました。尚、この場合、院外薬局で支払った薬剤費は、償還されます。

次の表は、在宅医療にかかる料金を示しています。

表5 在宅医療にかかる料金
24時間体制で訪問診療をうける場合必ずかかる費用
項目 料金 内容
1割 3割
訪問診療料 830円 2,490円 計画的に訪問診療を行った時の往診料金
在宅時医学総合管理料
* 下記以外の在支診
* 機能強化型
* 機能強化型(有床診)
4,200円/月
4,600円/月
5,000円/月
12,600円/月
13,800円/月
15,000円/月
24時間対応体制をし、月2回以上の訪問診療を行う場合の管理料。医療機関の種類によって、点数が異なる。
臨時往診や対応を受けた場合、他のサービスを受けた場合などに追加でかかる費用
往診料 800円 2,400円 臨時往診をした時の往診料
深夜往診
(22時~6時)
2,630円 7,200円 深夜に臨時往診をした時の往診料
訪問看護指示料 300円/月 900円/月 医師が訪問看護の指示書を交付した時の料金(1~6ケ月に1回)
情報提供料 250円 750円 入院、通院で
電話再診
(昼間)
80円 240円 医師が電話対応した際にかかる料金
居宅療養管理指導
(介護保険)
580~1,000円 2,520~7,630円 何等かの介護サービスを利用している場合、医師が患者・家族に助言し、他機関の連携のためにかかる料金
医療処置や臨時対応を受けた場合にかかる費用
検査料
(採血、尿検査等)
450~680円 1,350~2,040円 採血、検尿検査、超音波やレントゲンなどの諸検査や様々な処置など、出来高でかかる料金
(表は当院の実績をもとに作成しており、必ずしもこの範囲内とは限りません)
画像診断料 170~1,420円 510~4,260円
注射・点滴 100~4,960円 300~14,880円
処置量 40~7,020円 140~21,060円
各種療養指導管理料 230~18,070円 690~54,210円 在宅酸素や人工呼吸、気管切開、中心静脈栄養等の医療処置を実施している人にかかる料金

最後に、自己負担が高くなりがちな3割負担の方の支払いを見てみましょう。在宅医療の対象の方の多くは1割負担ですが、70歳未満の方や現役世代並みの所得のある高齢者は3割負担になります。

Bさんは、60歳男性で、大腸癌末期で在宅療養中です。

1ヶ月にかかった医療点数19,062点で、3割負担のAさんの自己負担は57,186円と高負担になります。

加えて、院外薬局で処方するモルヒネなどの医療用麻薬の薬価が高いため、医療機関に支払う医療費に加えて薬剤費の自己負担が見過ごせません。Bさんの薬剤費は、医療用麻薬(オピオイド鎮痛薬)だけで3,936点、3割負担の自己負担額として11,811円かかりました。また、末期のがん患者さんでは、訪問看護は医療保険を使います。

この方は、入院中に抗がん剤治療と入院費のために、3回以上高額療養費の本来の負担の上限額を超えたため、在宅での高額療養費は44,400円になっていました。そのため、医療機関からの請求は44,400円でした。

また、12,786円(57,186円-44,400円)と薬剤費、訪問看護ステーションの請求分は高額療養費制度によって、後に償還されることになります。


在宅医療にかかるお金はこのようにとても複雑です。高額療養費や障害・難病などの制度、生活保護などの制度を駆使して、療養環境を整備していくことも、医療機関の役割です。在宅医療にかかるお金についても、訪問診療を受けている医療機関の事務やソーシャルワーカーに御相談ください。

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